近くで見れば、ただの点。少し離れれば、一枚の景色になる。
* * *
赤坂ゆりには、断るという才能がなかった。
正確に言えば、何でも引き受けてしまうほど人がいい、という単純な話ではない。できないことはできないと頭では分かっているし、あとで工場から嫌な顔をされることも、営業課長の緑野に静かにため息をつかれることも、この半年でそれなりに学んでいた。ただ、誰かが困った顔をして自分の前に立つと、「できません」という言葉だけが、そこに居場所を失ったみたいに喉の奥へ引っ込んでしまうのだ。
九州の小さな印刷会社「第一印刷」に入って、まだ半年。朝、会社の扉を開けると、紙の匂いとインキの匂い、それから工場の奥で回り始めた機械の低い振動が、いつもほとんど同じ順番でゆりを迎えた。けれど、そこで扱われているものについては、まだ知らないことのほうが圧倒的に多かった。
それなのに、その日もゆりは受付カウンターの向こうに立つ老紳士から、古びた一枚の写真を差し出されると、ほとんど反射のように笑ってしまった。
「大丈夫です。なんとかしてみます」
老人の顔が、ほんの少し明るくなった。
その瞬間、背後で営業課長の緑野が小さく咳払いをした。
ゆりは聞こえなかったことにした。
* * *
老紳士が「写真」と呼んだそれは、あとから考えれば、最初から少し妙だった。
写真館で焼き付けられた印画紙のような滑らかさはなく、表面には長い時間を吸い込んだ紙特有のざらつきがあった。黄ばんだ厚紙の一部を誰かが丁寧に四角く切り抜いたもので、四隅は丸く擦れ、縁には細かなひびが走っている。
その小さな四角の中に、縁側らしき場所へ並ぶ五人が写っていた。

中央には白い割烹着の女性がいて、その左右に四人の子どもがいる。夏の光が強かったのだろう。みんな、少しずつ目を細めていた。笑っているのか、まぶしいだけなのか、ぱっと見ただけでは分からない。でも、五人が同じ方向を見ているというだけで、不思議と家族だと分かる写真だった。
「母です」
老人は中央の女性を指した。指先は節が太く、爪の縁に年齢が出ていたが、写真へ触れるときだけ、その動きは妙に慎重だった。
「こっちが私。十歳くらいですかな」
端にいる坊主頭の少年だった。
「母が亡くなって、今年で二十五年になります。今度、きょうだいで集まることになりましてね」
ゆりは写真から顔を上げた。
「いいですね。皆さんお久しぶりなんですか?」
老人は少しだけ笑った。うれしそうな笑い方ではなく、何かを一度飲み込んでから、その上に薄く笑顔を置いたように見えた。
「四人そろうのは、二十五年ぶりです」
その言い方には、年月だけではない何かが混じっていた。
「これを少し大きくして、四枚欲しいんです。みんなに一枚ずつ渡そうと思って」
「分かりました」
ゆりがそう答えると、老人は「ただ……」と言って、写真の表面をゆっくり指で撫でた。
「これしか残っていないんです」
その指の動きを目で追っていて、ゆりは初めて気づいた。
写真だと思っていたものの端に、小さな活字が残っている。
『昭和五十二年 町内婦人会――』
ゆりはもう一度、紙全体を見た。新聞か、町内会報か、あるいは何かの記念冊子だったのかもしれない。
つまりこれは、元の写真そのものではない。
一度、どこかで印刷された写真なのだ。
* * *
「ゆりちゃん」
老人が帰ったあと、工場長の黄金井大介――通称ゴルさん――は、原稿を蛍光灯に透かすように持ち上げながら言った。
工場の空気は事務所より少し暖かく、紙粉と油とインキの匂いが混ざっていた。遠くでは機械が規則的に唸り、誰かが紙を揃える乾いた音がしている。
「ゆりちゃん、これ“写真”じゃないよ〜」
「はい。さっき気づきました」
黄金井は原稿から目を離し、ゆりを見た。
「さっきって、いつ気づいたのよ」
「受注したあとです」
黄金井は目を閉じた。
身長百八十センチ、体重九十九キロの巨体が、なぜかその瞬間だけ少し小さく見えた。
「四枚だよねぇ?」
「四枚です」
「普通ならスキャンして出力すりゃ終わるんだけど……」
「じゃあ簡単ですね」
「簡単なら、こっちもこんな顔してないよ〜」
工場の奥で、白石龍三がこちらを見た。
無言だった。
白石はたいてい無言だが、その無言にはいくつか種類がある。機械の音を聞いている無言、誰かの作業を見ている無言、言うだけ無駄だと思っている無言。
今のはたぶん、『また赤坂か』の無言だった。
黄金井が写真をゆりの目の前に差し出した。
「ゆりちゃん、もうちょっとよく見てみてよ」
「見てます」
「もうちょい、もうちょい」
言われるまま、ゆりは顔を近づけた。
元々目はいい。漁師の家で育ち、海面のわずかな色の違いから潮目を見つけるのは、子どもの頃から得意だった。遠くの浮きを見つけるのも、人より早かった。
だから、少し意識して見れば分かった。
肌も、服も、背景の柱も、ひと続きの色で塗られているわけではない。そこには無数の小さな点があり、濃くなったり薄くなったりしながら、顔や影や木目の形をつくっていた。
「……点?」
黄金井がうなずいた。
「網点。こいつは一回印刷されてんの。これをそのままスキャンして、また印刷用の網にするとね」
そこまで言って、黄金井は工場の奥を見た。
「龍さん」
白石は返事をしなかった。ただ少しして、一枚のテスト出力を持ってきて、ゆりの前に差し出した。
ゆりは受け取ると、思わず眉を寄せた。
老婦人の頬にも、子どもの服にも、さっきの原稿にはなかった波のような模様が浮いている。細かな縞が寄ったり離れたりしながら、顔の上をゆらゆら這っていた。

「なにこれ」
白石が一言だけ言った。
「モアレ」
それだけ言って、戻っていった。
「説明、短っ」
黄金井が肩をすくめた。
「網と網が喧嘩してるんだよねぇ」
「喧嘩?」
「詳しい人に聞いてみたら〜」
黄金井の言い方は、半分は説明を放棄しているようで、半分は誰に聞けばいいか分かっている人の言い方だった。
その瞬間、ゆりの頭には一人しか浮かばなかった。
* * *
仕事の合間を見て、ゆりはスマートフォンを取り出した。
MMOゲーム『Continental Wind』――通称コンチ――にログインすると、見慣れた街の風景が小さな画面いっぱいに現れた。ゲームの中では夕暮れで、空は現実よりずっときれいな紫色をしている。
ほどなくして、コンチ上のパートナー「一気」からチャットが飛んできた。
一気=墨田一貴。
元印刷会社社長で、現在は個人で印刷の仲介をしている。ゆりが印刷会社へ転職するより前からゲームで知り合っていて、仕事の話をするようになったのは、ゆりが第一印刷へ入ってからだった。
そして夜になると、MMOの世界でゆりのキャラクター「ゆりぞう」を平然と置き去りにし、ひとりでボスを倒してしまう男でもある。
『まだ仕事中なのにログインか』
「トラブった、助けて」
『何を』
「印刷」
少し間があいた。
『範囲が広すぎる』
「写真をスキャンしたら変な波が出た」
『原稿は』
「古い写真」
『“写真”というのは銀塩写真か印刷物か』
ゆりは入力欄の上で指を止めた。
「……印刷物」
画面の向こうで、小さなため息が聞こえた気がした。もちろん文字しか届いていないのだから、そんな音がするはずはない。それでも、墨田のため息はなぜか文字だけでも分かる。
『最初からそう言え』
「同じようなもんでしょ」
『全然違う』
即答だった。
『印刷物の写真は、もう一回“点”に分解されてる。それをスキャナで拾って、さらに出力側でもう一回点にする。元の網点と新しい網点の周期がぶつかればモアレが出る』
「網点って、さっき工場長も言ってた」
『ゆりぞう、カラー印刷が何色で刷られてるか知ってるか』
「いっぱい」
『四色』
「……四?」
『シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック。C、M、Y、K』
「ああ。それは知ってる」
『怪しいな』
「知ってるって!」
『じゃあ肌色のインキは?』
「……ない」
『空の水色は』
「ない」
『茶色は』
「ない」
そこで、ゆりは黙った。
チャットの向こうで、墨田の文字が少しだけ楽しそうになった気がした。
『ないのに見える。それが印刷だ』
「どういうこと?」
『その原稿をルーペで見ろ』
「今ない」
『印刷会社にいてルーペがないわけないだろ』
横から黄金井の手が伸びてきて、黒いルーペが机の上に置かれた。
どうやらチャットが見えていたらしい。
ゆりは何も言わず、それを借りた。
原稿へルーペを当てると、さっき肉眼で見えていた点が、今度は一つ一つ形を持って現れた。
青っぽい点。
赤っぽい点。
黄色。
黒。
それらは同じ大きさでも、同じ向きでもなかった。整列しているようでいて、少しずつ角度を変えながら、互いの隙間へ入り込んでいる。
「……本当に四つしかない」
『正確には紙の白も使ってるけどな。人間の目が離れた場所からそれを見ると、点を一個ずつ認識できない。隣り合った色をまとめて“別の色”として感じる』
「目の錯覚?」
『そう言っていい』
ゆりは写真から顔を離した。
ルーペの中では、ばらばらの色の粒にしか見えなかったものが、距離を取った瞬間、また白い割烹着の女性の顔へ戻っていく。
知識として説明されるより先に、目のほうが理解した。
『あと、四版の網点は全部同じ角度に並べればいいってもんじゃない。干渉して変な模様が出にくいように、角度をずらす』
「仲悪いんだ」
『何が』
「四色」
『そういう擬人化はいらない』
「でも同じ向きに並べたら喧嘩するんでしょ?」
しばらく返信が来なかった。
『……まあ、そう思っとけ』
ゆりは笑った。
「じゃあ、この写真はどうする?」
今度の答えは早かった。
『一度、元の網点をほどく』
「ほどく?」
『高解像度で取り込んで、元の印刷の網をできるだけ均す。必要なら角度も変える。ぼかし過ぎれば顔が死ぬから、輪郭はあとで戻す。階調を作り直して、それから新しい網にかける』
「点を消して、また点にするの?」
『そう』
「なんか無駄じゃない?」
『ゆりぞうの人生よりは合理的だ』
「落ちるよ」
『勝手にしろ』
ゆりはログアウトした。
画面がゲームの街から現実の事務所へ戻ると、工場の機械音が急に近くなった。
* * *
作業は、思っていたより時間がかかった。
スキャンして終わり、ではない。
原稿の中には、写真の内容だけでなく、元の紙の黄ばみ、小さな傷、印刷の網のざらつき、それから長い時間の中で少しずつ薄れていった顔の輪郭まで、全部一緒に残っていた。
スキャナの光が原稿の上をゆっくり横切るたびに、何十年も前の一瞬が少しずつデータへ置き換わっていく。
黄金井が取り込み条件を変え、白石が出力を見て首を横に振る。
一枚出しては比べ、また設定を変える。
紙の上に現れた顔が少し柔らかすぎれば輪郭を戻し、ざらつきが強ければ処理を変える。汚れを取れば取るほどきれいにはなるが、きれいにしすぎると今度は、その写真が持っていた時間まで消えてしまうようだった。
ゆりも横で原稿とテスト出力を何度も見比べた。
三枚目のテストが出てきたとき、ゆりは少しだけ顔を傾けた。
「ゴルさん。おばあちゃんの右の頬、少し赤すぎない?」
黄金井が一瞬、彼女を見た。
「分かる?」
「最初の原稿だと、もうちょっと黄色っぽい」
白石がテストを取り上げ、元の原稿と交互に見た。
何も言わない。
だが数分後、新しい一枚が出てきたとき、老婦人の頬の赤みはほんの少し引いていた。
派手な違いではない。
けれど、ゆりには分かった。
「直ってる」
白石は背中を向けたまま言った。
「目だけはいい」
黄金井が吹き出した。
ゆりは少しだけうれしくなった。
褒められたのかどうかは、かなり怪しかったが。
* * *
翌日の午後、老人が受け取りに来た。
午後の光が受付の窓から斜めに差し込み、カウンターの上の紙を白く照らしていた。
厚めのマット紙に印刷された四枚を、ゆりは一枚ずつ少しずらして並べた。元の切り抜きよりずっと大きくなり、白い割烹着の母親も、坊主頭の少年も、その隣の姉も、少し離れて立つ弟と妹も、昨日よりはっきり見える。
背景には古い木造の家があり、その軒先には洗濯物の影まで残っていた。
老人はしばらく何も言わなかった。
一枚目を手に取り、少し離し、また近づける。
「……こんな顔だったな」
小さく、そう言った。
「母は写真が嫌いでね。これも町内会の人に無理やり撮られたんです。だから、家族で写っているのはこれ一枚しかない」
ゆりは元の切り抜きを返した。
老人は新しい印刷物を一枚持ち上げ、目を近づけた。
「きれいになった。でも……」
「はい?」
「近くで見ると、また点なんですね」
ゆりは少し驚いた。
昨日までの自分と同じことを言ったからだ。
カウンターの引き出しからルーペを取り出す。
「見ますか?」
老人は笑って受け取った。
「これは?」
「印刷を見る虫眼鏡みたいなものです」
老人が覗く。
「ほう」
「青っぽいのがシアン。赤っぽいのがマゼンタ。黄色と黒。基本的には、その四つです」
「これだけで?」
「はい。肌色のインキがあるわけじゃないんです」
老人はしばらくルーペを動かしていた。
「母の顔も?」
「四色です」
「この茶色い柱も?」
「四色です」
「青い空も?」
「四色です」
老人はルーペから顔を上げた。
「不思議なものですな」
「私も昨日知りました」
工場の奥で黄金井が咳き込んだ。
ゆりは聞こえなかったことにした。
「それぞれ違う色の小さい点なんです。しかも、点の並ぶ角度も少しずつ違います。全部を同じ向きにすると、きれいにならないことがあるんです」
「同じにしないほうがいい?」
「そうみたいです」
言ったあとで、ゆりの頭に墨田の『場合による』が浮かんだ。
きっと、今の言い方を見たら訂正される。
だから、少しだけ言い直した。
「少なくとも、みんな同じじゃなくていいように作られてます」
老人は印刷物へ視線を戻した。
「近くで見ると、ずいぶんバラバラですな」
「はい」
ゆりは一枚を壁際の棚へ立てた。
昨日、自分がルーペから顔を離したときのことを思い出しながら、二歩下がる。
「でも――少し離れて見てください」
老人も、一歩、二歩と後ろへ下がった。
すると点は見えなくなった。

シアンも、マゼンタも、イエローも、ブラックも、その名前ごと写真の中へ沈んでいく。
そこにはただ、夏の日差しの中で笑う母親と、四人の子どもがいた。
* * *
老人は長い間、その写真を見ていた。
その沈黙は、受付で待つには少し長かったが、ゆりは急かさなかった。
やがて老人が、写真から目を離さないまま、ぽつりと言った。
「二十五年前、母が死んだときにね。きょうだいで大喧嘩をしたんです」
ゆりは何も言わなかった。
「実家をどうするか。墓をどうするか。誰が母の面倒を一番見たか。昔、誰が何をしてくれなかったか。そんな話ばかりになって」
老人は苦笑した。
「一つひとつは、たぶん全部、本当だったんでしょう。だから余計に始末が悪い」
写真の中の四人の子どもは、そんな未来など知らない顔で笑っていた。
「それから、四人で集まったことはありません」
「……今回、どうして?」
老人は少し息を吐いた。
「妹から電話がありましてね。『もう私たちも、いつまで生きてるか分からんよ』って」
そう言って、今度は少し本当に笑った。
「腹が立ちましたよ。久しぶりの電話で、いきなりそれですから」
ゆりもつられて笑った。
「でも、切ったあとで、押し入れを探しました。何か持って行くものはないかと思って。それで、これが出てきた」
老人は元の小さな切り抜きを見つめた。
その写真は、きれいとは言えなかった。色は薄れ、紙は傷み、顔には印刷の点が残っている。それでも、その家族が同じ場所にいたという事実だけは、四角い紙の中から消えずに残っていた。
「昨日までは、この写真を見ても、兄貴はあのときこう言った、妹はあのとき来なかった、弟は金のことで――そんなことばかり思い出してたんです」
老人はそこで言葉を切った。
「近くで見過ぎてたのかもしれませんな」
ゆりは何も答えなかった。
「家族も印刷と同じですよ」
そんな台詞が、一瞬だけ頭に浮かんだ。
でも言わなかった。
それはたぶん、ゆりが言うことではない。
たとえ同じことを思っていたとしても、自分から言葉にした瞬間に、何か大切なものが急に薄っぺらくなってしまう気がした。
老人は四枚の写真を一枚ずつ重ね、角を丁寧に揃えた。
「赤坂さん」
「はい」
「もう一枚、できますか?」
「もちろんです。五枚目ですか?」
「ええ。母の分です」
「お母さまの?」
老人は一番上の写真を指で軽く叩いた。
「四人で集まった日に、母のところへ持って行きます」
ゆりは意味が分からず、数秒考えた。
そして気づいた。
墓前に置くのだ。
老人は写真を抱え直してから、少し照れたように笑った。
「それと……やっぱり、もう一枚お願いします」
「六枚目ですか?」
「家に飾ります。今度は、少し離れたところにね」
* * *
老人が帰ったあと、ゆりは工場に残った一枚の刷り見本を手に取った。
工場の照明は一定で、外が夕方に近づいていても、紙の白さは昼間とほとんど変わらない。機械の向こうでは誰かが紙を揃え、ローラーの音が低く続いていた。
ゆりはルーペを当てた。
シアン。
マゼンタ。
イエロー。
ブラック。
近くで見れば、互いに混ざりきらない小さな点だった。
向きも違う。
大きさも違う。
重なっている場所もあれば、紙の白が残っているところもある。
それでも、ルーペを外すと、それらはもう「点」ではなくなる。
ゆりは二歩下がった。
そこには白い割烹着の母親と、四人のきょうだいがいた。
二十五年後に喧嘩することも。
二十五年も会わなくなることも。
そして、また会おうとすることも。
何も知らない五人が、同じ夏の日差しの中で笑っている。
工場の奥で、印刷機が回り始めた。
一定の間隔で響く機械の音が、四つの色を順番に紙の上へ運んでいく。
近くで見れば、ただの四つの色だった。
少し離れれば――
それは、一枚の景色になった。

Track 01 | Come Together
KEYWORDS
CMYK / 網点 / スクリーン角度 / モアレ / 再スキャン
TECHNICAL NOTES
オフセットのカラー印刷では、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(K)の細かな網点を重ね、離れて見たときに連続した色や階調として感じさせます。紙の上に「写真の色」そのものがあるのではなく、別々の点を人の目が一つの像として受け取っています。
各色の網点は、同じ方向へ並べるのではなく、干渉が目立ちにくいよう異なるスクリーン角度で配置します。角度や周期が不適切に重なると、規則的な縞模様であるモアレが見えることがあります。
一度印刷された写真を再びスキャンして印刷すると、元の印刷物にすでに存在する網点と、新たに出力する網点が干渉しやすくなります。実務ではデスクリーニング処理や適切なスキャン、画像処理を使い、元の網点を目立たなくしてから再出力します。
※技術解説は物語中の状況を理解するための一般的な補足です。実際の条件や最適な設定は、印刷方式・用紙・設備・加工内容によって異なります。
